ひとり映画日記2

映画・本・イギリス(アメブロ『ひとり映画日記』から引っ越し

面白いけれど女性は夢を目指せないのか?『バクマン』第1巻

 コンビを組みマンガ家になる男子高校生2人を描いた少年漫画。2人が連載を目指すのは『ジャンプ』だし「集英社」の名前もちゃんと出てくる、かなり本格的な「マンガ家」のストーリー。おじがマンガ家で自身もずっとマンガ漬けだった真城最高ましろ・もりたか あだ名はサイコー)と、秀才でエリートコースを期待されているが、決まったルートに抗いマンガ家という夢を追いたい高木秋人。秋人が最高に声をかけ、マンガ家という「博打打ち」に挑む。マンガ家と編集者がどのように考えマンガを作っていくのか、どれほどシビアな世界かが描かれていてすごく面白い。最高と秋人が計算高く切れ者なので、「プロとして描くための考え方」がうまくストーリーのなかに組み込まれている。

 ただ、気になる部分はある。マンガ家になりたいと親に告げる最高に対し父親が言う「やらせろ 男には男の夢がある 女にはわからない」(ただし最高に伝えるのは母親である)とか、最高が好きなクラスメイトの女子、亜豆(あずき)を秋人が評していう「可愛いお嫁さんになるのが女の一番の幸せって生まれながらに思っている それまではいや結婚しても女らしくおしとやかに可愛く」「それが計算じゃないんだから クラス一勉強できる女岩瀬より100倍頭いい」(83ページ)といったセリフなど。最初読んだときはうわー、と思った。思わず奥付を見ると2017年に刊行されていた。

 「そういう価値観の男性」を描いているのであり、これが作者の価値観とイコールとは思わないし、秋人や最高の考え方は変わっていくのかもしれない。ただ「男の夢が女にはわからない」「女の夢(幸せ)が結婚」なら、この「夢を掴む」男性2人のマンガを読んだ女は何を思えばいいのだろう。マンガのストーリー自体がとても面白くワクワクするだけに疎外感を抱いた。亜豆は「声優になる」という夢があるので亜豆のことがこれからちゃんと出てくると嬉しい。

 

バクマン』第1巻

2017年 集英社