渋谷区の松濤美術館でおこなわれている『私たちは何者?ボーダレス・ドールズ』展にでかけた。修論で人形表象について書いたこともあって、見ないわけにはいかない。
充実していて面白い展覧会だった。日本の人形文化を平安時代の「人形」(ひとがた)から現代のフィギュアまで振り返る。
青森県でヤマゴ(山に入る仕事の人)が持っていったという「サンスケ」が興味深い。12人では不吉だということで「13人目」の人として持っていったらしい。昔からある人形を見ながら、人間の創造/想像力ってすごいなあと嘆息するばかり。
戦争や植民地主義と人形の関係を展示していたのも面白かった。世界のさまざまな「人種」を表した人形(レイシズムや帝国主義の視点が入っている)や、特攻隊に女性たちが送っていたという人形。「人形」もまた戦争などの問題とは切り離せないのだ。
最後の展示室には生人形やフィギュアがあり、「生きている?」と思わずにいられなかった。今にも動き出しそうだった。ドストエフスキーの蝋人形もあった。このスペースでは、四谷シモンや天野可淡の人形が展示されていたのに感動した。修論を書いているときに読んだ本にはよく四谷シモンのことが書かれていたのだ。実際に見れる日が来るとは。工藤千尋など知らなかった作家の作品も見ることができた。工藤千尋の人形を見ていて苦しくなる思いがした。
やっぱり人形は面白い。図録も買った。