ひとり映画日記2

映画・本・イギリス(アメブロ『ひとり映画日記』から引っ越し

レインボー・リール東京 『孔雀』

 初めて、第31回レインボー・リール東京~東京国際レズビアン&ゲイ映画祭~

に行ってきた。LGBTQを描く映画の映画祭で、今週17日までは表参道、来週は渋谷で開催される。表参道のスパイラルホールで上映された『孔雀』を観てきた。

会場の外に飾られたレインボーフラッグ

会場の外に飾られたレインボーフラッグ



トランスジェンダー女性のダンサー、ミョンが主人公。手術の費用が必要なためダンス大会での優勝に賭けていたが、決勝戦で敗退してしまう。そんな折、父の死を知らされ地元へ向かう。ミョンの服装に顔をしかめ、「男らしくしろ」というおじ、何か言いたげな周囲の人々。そして幼馴染から「四十九日の舞」に出れば遺産を渡すという父の遺言を聞かされる。父が嫌いだったミョンは受け入れがたく思うが、遺産には心動かされる。

 

 とても誠実で丁寧に作られた映画だ。孔雀—監督によると天と大地をつなぐ象徴だという―が、華やかで堂々としているミョンにはぴったり合っているように感じた。演じているヘジュンもダンサーで動きのキレが抜群。冒頭のダンスバトルから観ているこちらも盛り上がり、何度かあるダンスシーンは目が離せなかった。

 「丁寧」というのは人間関係の描き方だ。ミョンと幼馴染の男性の関係、おじとの関係、おばとの関係。トランスジェンダーであることに嫌悪感を隠さないおじ、味方をするが自分の息子がゲイだと知ると戸惑うおば、ミョンの側に立ちつつ農楽の師匠だったミョンの父への思いも義理堅くもつ幼馴染。一概に「地方だから理解がなく閉鎖的」という描き方はしていない。おばのように、一貫せず戸惑う存在も描かれている。それでも、私は心中ではどう思おうと態度に出すべきでないし差別はだめだと思うが。しかし本作は、ミョンや幼馴染、その弟など他者に対して向き合おうとする者の存在もまたしっかりと描いている。また、おじやおばにも変化がほの見える。

 彼女が「自分」のダンスを最後に見せる場面がとても良かった。まさしく炎のようだ。亡くなった相手と話し合うことはできなけれど、自分の気持ちと折り合うことはできるのではないだろうかと感じた。悲観的なラストにはならず、かといって「家族愛」で落ち着かせないところが上手いと思う。ミョンのお金のこともきちんと解決されていた。

 

アフタートークでは新大久保の本屋loneliness booksのオーナーが司会を務め、監督の話を聞くことができた。監督のトークがあるのは映画祭の醍醐味!

レインボー・リール東京は日英アナウンス、手話通訳あり。会場ではレインボーフラッグの缶バッジや本も売られていた。来週も行こうかと思う。

 

『孔雀』

監督:ピョン・ソンビン

2022年 韓国語