ひとり映画日記2

映画・本・イギリス(アメブロ『ひとり映画日記』から引っ越し

今では3回以上頼むだろう―2023年9月に読んだ本 2023.09.30

  体調不良で臥せっているあいだに9月が終わってしまう。9月は

向田邦子『思い出トランプ』

髙村薫『レディ・ジョーカー

和田靜香『コンビニ店員は見たっ!~レジの裏から日本が見える~』

ブラスト公論

三浦しをん『極め道』

藤本和子『ブルースだってただの唄』

坂本菜の花『菜の花の沖縄日記』

を読んだ。

坂本菜の花『菜の花の沖縄日記』

和田靜香『コンビニ店員は見たっ!~レジの裏から日本が見える~』ぱる出版、2011

 『コンビニ店員は見たっ!』は、音楽ライターとして活動してきた著者のコンビニ店員実録。読みやすく、コンビニの実状が詳しく書かれていた。品出し、レジ、宅急便や諸々の支払いの対応とコンビニの仕事はとかく難しそうだ。「コンビニのお客さんを見たっ!」という章は、こんなに対応の面倒そうなお客さんがたくさんいるんだと思って気が遠くなった。コンビニ店員ってけっこうお客さんを見ているんだということもわかった。私もよく行くコンビニで、高確率でカプリコを買うから「カプリコの人」として認識されているんだろうか。恥ずかしいけれど、カプリコが好きだから買ってしまうのだ。そして、和田靜香さんの新刊イベントがまさに今日つくばで行われているよう。もっと早く知っていたら行きたかった。

 

三浦しをん『極め道』光文社、2007

 『極め道』は元祖オタクの三浦しをん先生のエッセイで、さすがの面白さ。2023年の今なら「推し活」と言われているだろう、熱い記録だ。想像・妄想炸裂で笑いが止まらない。毎週楽しみにしているラジオのような面白さ。三浦しをんの作品でもかなり初期のもののようで、デビュー作についても、親戚が熱心に宣伝しているといったことがふれられている。

 

 もう一つ多かったのは、「もし万が一、K談社から原稿依頼がくるようになったらどうするの?」でしたが、そんなにビックになることはまずないので、それは捕らぬ狸の皮算用というもの。

(中略)

K談社のみなさん、原稿依頼は一回断られたって諦めちゃいけませんよ。素直になれないシャイなあんちくしょうのために、三回は粘って依頼してくださいよ。ありえないと思いつつも、念のため劉備玄徳に頭を下げられる諸葛孔明を夢想してみる。

(「本屋で君を待っている」『極め道』p.206)

 

ビックになってるじゃないですか!!三浦しをんに書いてもらえるなら、5回は断られても依頼したいという人がたくさんいるんじゃないでしょうか。「ビックになる前」を読めるなんて、本てすごい。この時既に十分文体が完成されている三浦しをん先生。

 

 そんな三浦しをんの別のエッセイで髙村薫のことが書かれていて読み始めた。『レディ・ジョーカー』は濃厚で読んでいて疲れたが、読み終わったいまでは登場人物が実在していると思えて仕方ない。『黄金を抱いて翔べ』しかり、情念と諦念がうずまいていてむせ返るよう。

 

 坂本菜の花『菜の花の沖縄日記』の感想はnoteに書いた。

note.com

 

いちばん面白かったのは藤本和子『ブルースだってただの唄』。アメリカの黒人女性の経験の聞き書きでパワフルな一冊だった。