ひとり映画日記2

映画・本・イギリス(アメブロ『ひとり映画日記』から引っ越し

『ほつれる』と『悪人』と『零落』 2023.10.01

 私の今年のベスト映画は『ケイコ 目を澄ませて』だ。これはもう揺るがないと思う。それに匹敵するくらい面白かったのが、今日観た『ほつれる』。門脇麦演じる主人公が「浮気相手」と会い、夫とかみ合わず、という様子を淡々と映し続けるとても地味な映画だ。主人公と夫の関係は傍から見ると破綻しているのに、二人とも声を荒げることはほとんどない。それでもいいようのない「嫌な空気」と、核心を避けて延々と続く二人の会話。抑えつけられたまま震える感情。門脇麦と田村健太郎の演技を堪能した。私はこの映画や『フォックスキャッチャー』のような、感情がとことん抑制されているのに緊張感あふれる映画が好きなのだ。人間はそうそう泣き叫んだりしないと思う。

 今日は出かける前に『悪人』も観ていた。出会い系サイトで出会った男女と殺人事件をめぐる愛憎劇だ。こちらはあまり好きではなかった。『悪人』も『ほつれる』も、勝手にしろと言いたくなる、自分勝手な者同士の人間関係が描かれる。でも後者が好きなのは、やはりあまり台詞で説明していないからかなあ。それから『ほつれる』に出てくる人たちの方が好きだった。『悪人』だって人間の複雑さを描いているけれど、出てくる人たちはどうも好きになれないというか、突き放して観てしまうのだった。監督の描き方としても『悪人』はけっこう蹴落とすようなひりひりする描き方をしていると思う。

 もう一つ、今日読んで恐ろしかったのが浅野いにおの『零落』だった。鬱屈としていて、エゴにまみれていて、それを漫画家が漫画家が主人公の漫画にしてしまう。ぞぞっとした。今日は人間のエゴについて突き詰めた作品ばかり見ていたのだった。

 

追記:国立で食べたカレーが美味しかった。