ひとり映画日記2

映画・本・イギリス(アメブロ『ひとり映画日記』から引っ越し

ラッセンの個展にもマツケンサンバにも行く―辛酸なめ子『アイドル万華鏡』

 濃~い本を借りてきてしまった。

辛酸なめ子『アイドル万華鏡』

河出書房とは思えないカバー(失礼!)でも、このなんともいえない「濃さ」が本書!

辛酸なめ子『アイドル万華鏡』(河出文庫)。単行本は2005年に刊行されており、2000年代話題を集めたアイドル(芸能人)について短いエッセイとイラストが収められている。今井絵里子上戸彩大塚愛ソフィア・コッポラまで(ほとんどが女性アイドルだ)。主にゴシップネタで、ジェンダーセクシュアリティの点からすると、今ならこの書き方はしないだろうなと思うところもある。大雑把に括ると2000年代、女性芸能人のゴシップネタが下世話な視点から今以上に話題だったのは確かだと思う。私もゴシップネタを漁っていた。ニュースやネタから各アイドルについて書いたのが前半の「夢想編」。

 で、後半がアイドルの現場に赴く「実録編」。マツケンサンバ松平健のコンサート、クリスチャン・ラッセンの個展、ペ・ヨンジュン来日時の空港など辛酸なめ子氏のフットワークの軽さはとどまるところを知らない。t.A.T.u.のライブなんてものすごくつまらなそうで、だんだん著者が武者修行をしているように読めてくる。それを克明に記す恐ろしさ.......。なんでこの人、こんなところに行ってるの?

 このエッセイの視点はなかなか意地悪だ。それってどう?と思う書き方は別にして、コンサートやファンの「わけのわからなさ」を見てみてレポートする、「推し活」を「いいじゃん」と肯定するのではなく「いや、よく考えるとそれなんかおかしいだろ!」と指摘するところが面白かった。

 最近、三浦しをんのエッセイや『ブラスト公論』など同時代のエッセイをよく読んでいる。すると、同じ人が話題に上がっており、「この人は人気だったんだな」「話題になっていたんだな」ということがよくわかる。本など、記録として残っているものの面白いところだ。

 

辛酸なめ子『アイドル万華鏡』河出書房新社、2010年

 

 辛酸なめ子はラジオ「アシタノカレッジ金曜日」にゲスト出演した際、上野公園でサルに攻撃された話を淡々と語っていた。面白いことに突っ込むだけでなく、おかしなことの方からやってくる人なのかもしれない。「プレ金ナイト」の今年最後の放送もゲスト出演されるだろうか。

www.youtube.com