ひとり映画日記2

映画・本・イギリス(アメブロ『ひとり映画日記』から引っ越し

別に「恋で成長」しなくたっていいんだよね 2023.09.11

 久しぶりに図書館に行ったら面白そうな本が3冊くらいあって全部借りた。たしか船橋市図書館がツイッターにあげていたチャートによると、私は中原中也を読むといいらしい。詩集『汚れっちまった悲しみに......』を借りてみた。

ガール・ピクチャー | あらすじ・内容・スタッフ・キャスト・作品情報 - 映画ナタリー

 

 先日、目黒シネマで観た映画がとっても良かった。『ガール・ピクチャー』。フィンランドの映画で、3人の高校生(全員女性)が出てくる。親友でバイト先も同じミンミとロンコ、そしてフィギュアスケート選手のエマ。ミンミは眉を剃ったパンクな人でよくイライラしている。かわいらしいカールした髪のロンコは楽しく過ごしつつ、「好きな男子といても何も感じない自分はおかしいのでは」と感じ焦っている。アスリートという感じのすらりとしたエマはスケートが全てだが、トリプルルッツが跳べなくなってしまった。
 ミンミとエマは、第一印象は最悪だったものの恋人になる。ロンコはパーティーに出かけては恋人を探そうと試みるもぎくしゃくしている、というところ。エマの大会の話やミンミと離れて暮らす母親の話がまじる。

 

 映像が―専門用語はわからないけれど―綺麗で素敵だった。映像の質感が同じく北欧映画の『わたしは最悪。』に似ている気がする。一番良かったのは、トリプルルッツをやってみせてよ、というミンミに向けて、エマが路上でスケートの動きをやってみせるところ。ここが美しい。こんなダンス見たら好きになってしまうよなと思う。

 3人の性格や背景が細やかに描かれている。もう自己中心ゆえというか、痛々しい失敗もたくさんする。恋人が悩んでいても用事を優先してしまったり、自分の都合だけで相手につめよったり......。別に恋人相手に限らず多くの人が(特に10代が)してしまうだろう「失敗」がたくさん! 私は特に、ショックなことがあり「家に泊まってくれる?」と尋ねるミンミに対し、「練習があるから」と杓子定規に帰ってしまうエマを見ていたたまれない気持ちになった。私もきっと同じことをしたというか、似たようなことをしてきた。ああ......。

 

 じゃあ恋を経て「成長」するのか? 別にそれが「恋」でなくても、セックスでなくても、「成長」しなくてもいい、という落としどころなのが、この映画が好きな理由だ。ロンコは最後に、「キスもセックスもしたくないんだ」と言う。好きな子といてもセックスしたくならない自分はおかしいのか?と悩んでいたロンコだったが、「したくない」それがロンコの、現時点での望みなのだ。
 今まで観てきた映画はたいてい、「本当に」好きな人に出会い結ばれるという展開だった。「恋は人を変える」とか「成長させる」という言葉もよく聞く。セックスをしたら「一人前」のような風潮もある。でも別に出会わなくたって、誰かと接触したくなくたって構わないじゃないか。人と関わることは確かになんらかの影響を自分に与えるし、それを「成長」と呼べもするけど。でも、「恋」でなくても、「恋」にキスやセックスが絡まなくてもいいのだ。「セックス」が「乗り越えるべき課題」のように描かれていないところがとてもいいと思った。今年観た映画のなかでもかなり好きな作品だ。まあミンミとエマを見ていて「恋人」いいなとも思ったけれど。本作はレズビアン映画としても好きだ。

それにしても、みな自分で運転しパーティーに出かけ、ほとんど大人が関わってこない。大人な高校生たちだ。高校生だよね?

目黒シネマでもらったチラシ

2本立てのうちもう1本の『セールス・ガールの考現学』の方はいまいち乗れなかった。この話はまた明日。