ひとり映画日記2

映画・本・イギリス(アメブロ『ひとり映画日記』から引っ越し

日記の効用 2024.06.04

 『日常をうたう』を読んでいたら、去年の8月15日に何をしていたのか知りたくてたまらなくなった。不定期のこのブログにはもちろんというか何もなかった。3日前に『バービー』の感想を書いている。それで、そういえばその時は夏休みで、本当は海での集まりがあったけれど台風で中止になって、でも雨はそれほどひどくなかったんだと思い出した。夏休みだった。東大のシンポジウムに行って、丸の内の本屋でクリームソーダを飲んで、『バービー』を観た。

 

 『日常をうたう』には、27人による、2023年8月15日の日記が収められている。編者の椋本さんの祖母(戦争を経験している)との会話を聴いたうえで書いてもらったそうだ。

 多くの日記に台風が出てきた。色々な地域で迎えた8月15日が書かれている。書き手の名前はローマ字表記で、名前以外の情報は載っていない。日記から仕事や人間関係が少しだけ垣間見える。そこがとてもいいと思った。最近の自分の気になる癖は、すぐに奥付を見てどんな人が書いたのか知ろうとするところだ。仕方ないとも思うし、目に入った肩書に読書が影響されているようで嫌だなとも思う。でも『日常をうたう』では、名前の字面すらわからない人たちの日記に集中できた。

 

時々こうやって立ち止まらないと、僕たちはすぐに忘れてしまうな。(略)「決して忘れてはいけない!」と息巻いたところで、歩き出すとまたすぐに忘れちゃうんだよな。

                   椋本湧也「8月16日」『日常をうたう』

 

 

 そうなのだ。忘れてしまうのだ。でも、だから著者は「いつでも思い出せるように」書くのだという。

 

 誰かの日記が手元にあると思うとどきどきする。ちょっと後ろめたい。でも一人で読んでいたいと思う。日記は、文章が上手いと感嘆するものもあれば、私とは違う意見だと思うものもある。書いた本人は目の前にいないから私は脳内で一人ああだこうだ言っている。最近、共感できないと仲良くなれないという風潮が強まっていると感じるけれど、意見が違ったらそれきりということはないと思う。

 

 カバーの美しさ(装画は三瓶玲奈)からフォント、紙の感じまで本の内容を伝えるためにまとまっていて、音声版へのリンクまである。自費出版のようだけれどただ者ではない.....と思い(←偉そうに)調べたら、話題のZine『26歳計画』の方でした。なんだかすごい人だ。

 

椋本湧也『日常をうたう』

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 8月15日のブログは見つからなかったが、1年前の今日書いたものはあった。私はオフ会に行っていたらしい。2024年の私はサイゼリヤのパスタを無心で食べていた。無心になるほどに美味しかった。