ひとり映画日記2

映画・本・イギリス(アメブロ『ひとり映画日記』から引っ越し

デッドデッドデーモンズ(以下略)感想

 すっごく面白かった!配信でもいいかなと思っていたけれど、観に行ってよかった。この傑作を見逃すところだった。

 

 マンガの連載が始まったとき、変わったタイトルだなと思った。マンガは読んでおらず、どういう話かまったく知らないまま観に行った。キャッチコピーに「地球がクソヤバい!」とあるから、この主人公らしき高校生2人が地球を救うのかな。

 

 この物語では、ある年の8月31日に突如現れた円盤が、ずっと東京上空にとどまり続けている。米軍が撃ったものの墜落せず、その際の放射能で一部の地区は住めない状況になり、多くの人が家を失った。主人公の門出と凰蘭(おうらん)は、高校最後の一年を過ごしている。

 自衛隊と大企業は武器を用意し、円盤から出てきた飛行物体を撃墜したり搭乗員を殺害したりと、戦争状態に入っている。陰謀論を信じる者や、東京を離れるか離れないかで揺らぐ者など、「非日常」が始まっている。円盤のある異常事態が「普通」になっている(ならざるを得ない)状況だ。でも、「戦争のなかにある日常の素晴らしさ」を描く映画にはなっていないと思う。門出は、教師に「先生、今の状況ってどのくらいヤバいんですか」と問う。教師は「こうしていられるのは、まぐれか奇跡か、あの円盤の気まぐれかもな」と答える。そして劇中のモノローグが過去形であるように、この「平和な」状況はいつか終わるものだという予感とともに観る。本当はおかしいのだと、見ないふりをしているだけなのだと薄々気がついている。本当はまずい状況だけれど、通常の生活をおくり続ける。そうするしかないとも言えるし、それに甘んじているともいえる。2024年に観ると、戦争、パンデミック、災害などの脅威と常に隣り合わせなのに、のうのうと生活している自分と重なった。こんなに「今の空気感」とリンクしている映画はあまりないのではないかと思う。「防衛」の名のもとに武力が増し、家に帰れない人がおり、でも関係ないふりをしていられる人もいる。そうした間に、「戦争」はどんどん進んでいく。

 門出と凰蘭の友情、親愛がメインであるのも良かった。2人は、お互いに何かあれば絶対に駆け付ける。「空を飛べたら何がしたいか」という問いに、門出は「凰蘭のもとに飛んでいく」という。凰蘭も同じ気持ちだと思う。この2人を始めとする高校生たちの会話の「馬鹿馬鹿しさ」もすごく良かった。それにしても、あのちゃんの凰蘭の声ははまり役だ。

 

 謎の多い回想シーンもあったので後編が待ちきれない。果たして....!?だってあの回想場面が本当なら、今はどうなっているということ?

「デッドデッドデーモンズ」だけでいいだろうに、律義に「デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション」まで噛まずに読んだ映画館のスタッフに拍手。言い方もぶっきらぼうで素敵だった。