ひとり映画日記2

映画・本・イギリス(アメブロ『ひとり映画日記』から引っ越し

会社員になって 2024.01.24

 会社員として働き始めてもうすぐ1年が経つ。ちょうどそんな折、渋谷のジェンダー映画祭で『サラリーマン』を観て色々な思いでいっぱいになった。

 私は小さな会社に、いわゆる「新卒入社」をした。それまでは学生でフルタイムで働いたことも正社員になったこともなかった。まわりの大人に会社員もほとんどいなかったから、都会で「会社員になる」ことがとても新鮮に感じられた。電車で通勤し、夜遅くまで働き、コンビニでご飯を買う。テレビやパソコンのスクリーンの向こうにあるだけで現実感のなかった風景が、ぐっと自分ごとになった。

 

時間がない、余裕がない、でも収入はある

 働き始めてから半年はとにかく疲れた。帰ってくると眠く、休日もぐったりしている。せっかくの連休も眠くて仕方がないということには驚いた。去年のゴールデンウィークは寝てばかりで終わってしまった。身体がとても重く、睡眠を必要としているのだ。友人に聞くと似たような感じで、「シャワーも浴びずに寝た」「1年目が一番辛かった」という経験談を教えてくれた。

 私は定時で帰ることも多く、残業はほとんどしない。これが「ラッキー」といえるくらい日本の労働状況がひどいことは、映画『サラリーマン』を観てもわかる。20時頃まで働き、そのあとは上司や同僚と飲み、電車を逃して道ばたで寝る。少なくとも「サラリーマン」と呼ばれる人たちの多くはこうした働き方をしているようだ。残業がなくてもくたくたなのに、22時頃帰宅してどれほど「自分の時間」をもてるだろうか?

 大学生のときは、「日本人は政治に関心が薄い」と言われると腹が立ち、自分はそんな大人にはならないぞと憤っていた。けれど、8時間働きながら政治や社会問題に関心を抱き続けるのは難しい。仕事や生活と社会は別物ではないはずなのに!
 そして時間があっても、気持ちがいっぱいいっぱいなのだ。職場で嫌なことがあった日など、社会問題のことなんて一瞬も考えたくないと思う。Youtubeで好きな動画を見て癒されたい。ぼろぼろの気持ちを抱えたまま、Youtubeをひたすら見ている夜がいくつもある。もっと残業したり、仕事の付き合いが多かったりすれば、いつ「真剣に」政治のことを考えられるだろう。

 しかし、毎月収入があることで学生のときより気分は落ち着いてはいる。金銭的余裕はあるが時間と精神的余裕がない。

 

お洒落なランチなんてないぞ

 1日の楽しみは終業時間と昼休みだ。私の職場があるエリアはそれほどお洒落ではなく、ランチも安い方。個人経営の古い店が並んでいて手頃だ。それでもお金がないのでコンビニで買ったりお弁当をもっていったりしている。あれれ?ただ、都心で働く友人も、忙しいのとランチ代があまりに高いのとで外食はそんなにしないと言っていた。お洒落なランチって誰がやってるのかしら......。

ランチではない。休日に食べたカレー



音楽に助けられる

 音楽を聴くことはあまりなかったのに、働き始めてから、音楽があってよかったと感じることがぐっと増えた。スピッツ、きのこ帝国、GLIM SPANKY、The Cheseraseraなどの音楽に助けられた。皆多くの人の、そして私だけの味方だ。『ミュージック・ブレス・ユー』という小説に、音楽がないと手も足も出ないときがある、というような一文があったけれど、そういう時ってあるんだなと思った。音楽を聴くことで会社に行けた。

 

ドラマが人気な理由がわかった

 昔は、テレビドラマ―特に仕事ドラマ―の人気がある理由がわからなかった。会社員はあまりに遠い存在で、私は感情移入できなかったからだ。それが、どんどん身近になっている。『私の家政夫ナギサさん』の1話はあまりに「私」で震え(もっとも私は仕事はできないし収入も少ないのだが)、『アンナチュラル』には、苦手な同僚と折り合いをつけていく様も描かれていたのだと感心した。多くの人がドラマに自己投影をしたり励まされたりし、テレビ局はそれを考えて制作しているのだと、今更ながら感心した。

 

 私が生まれ育った田舎には、たまに都会から移住してくる人がいた。なぜ都会のキラキラした生活を離れ、こんな田舎に来たのだろう?都会で暮らしたい私には不可解な行動に思えた。しかし、都会で働くことがかなりストレス度の高いものであり、お金のない人には冷たい場所であることもまた知ったのだった。満員電車のぎらついた車内を見よ!田舎には田舎のストレスがありますが。引っ越してきた人たちにも色々なストーリーがあったのだろうと今ならわかる。

 

ほかの人は会社員1年目をどう感じた/感じているのだろう?